「骨延長器」という器械を装着して、第一段階は終了です。
手術後は、軟部組織が治癒するのを待って、一週間後から「骨延長」を開始しました。
これは一日当たり○・五mずつ、骨延長器で歯槽骨を垂直に上方へ移動させるものです。
これを一○日間行うことにより、歯槽骨が五m持ち上げられます。
一日にわずかずつ骨延長をすることで、骨が形成されると同時に周囲の骨膜や軟部組織も延長され、結果として骨がしっかりとし、量を増すわけです。
そうすれば、人工歯根を理入するだけの高さと厚みをもった歯槽骨が得られることになります。
この方法が取り入れられる前は、歯槽骨を五m増生させるためには大学病院に二週間ほど入院して、全身麻酔で腸骨移植の手術を受けることが必要でした。
それでは患者さんの負担も大きかったことでしょう。
骨延長が終了した後、Gさんには二か月間「保定期間」といって、骨延長器を装着し態がよくありません。
そのため「歯槽骨延長法」を試みることにしました。
これも新しい治療法の一つですが、インプラント治療をする前に、やせている歯槽骨をあらかじめ増生しておく手術です。
歯槽骨がほとんどない状態から、再生治療を経てインプラント治療に成功した例ここで紹介するケースは、「インプラントにしたいけれど、歯槽骨がほとんど吸収されており、治療ができない」と歯科医師から断られた多くの患者さんにとって、たいへん参考になると思います。
Hさんは七一歳の男性で、私の勤務する大学病院を受診されたのは二○○一年五月のことでした。
上下無歯顎で、「入れ歯が動いてしまいとても噛みにくく、会話も不自由なままにして、生活していただきました。
この期間に骨が成熟していくわけですから、たいへん重要な時期といえるでしょう。
一次手術で人工歯根を埋入したのが七月(このとき骨延長器も取り外します)、二次手術で支台部を取り付けたのが二月でした。
上部構造は、上顎前歯のため、審美性を重視してセラミックによる人工歯冠だけでなく、人工歯肉も作製しました。
Gさんに、「腫傷もきれいさっぱり取ってもらい、インプラントもきれいにできて満足です」といわれ、私もこれまでの長い経過をふり返り感無量でした。
である」というのがHさんの訴えでした。
雑誌の記事で、インプラント治療という方法があるということを知り、受診されたのです。
CT撮影による診査の結果、下顎の歯槽骨は、だいぶ骨の吸収が進んではいるものの、なんとか人工歯根を埋入することができそうでした。
問題は上顎の歯槽骨で、ほとんど骨が吸収されており、ないに等しい状態でした。
このままの状態では人工歯根を埋入することは不可能です。
そこで私はHさんに、上顎洞底挙上術と腸骨移植術を同時に行う方法を提案しました。
腸骨の一部を削り取って、挙上した上顎洞底部に移植する方法です。
しかし、Hさんは、この方法に難色を示しました。
腰の骨の一部を削り取るという手術は、患者さんにとって、たいへん負担になります。
ご高齢でもあり、入院期間が長くなることも(二週間以上)、Hさんには不安だったのでしょう。
そこで私はHさんの希望にそうよう、なるべく患者さんの体に与える負担の少ない「縮小手術」のプランを立てることにしました。
それが再生治療による手術です。
これには「生きた細胞」と、それが「生着する足場」と、それを活性化する「生理活性物質」が必要となります。
そこで、手術する口腔と同じ部位であるオトガイ部から骨と骨髄を採取し(生きた細胞)、それに人工骨を混ぜ合わせて量を増やし(生着する足場)、そこにPRPを混ぜ合わせれば(生理活性物質)、腸骨から採取するのと同じような状態が得られるという方法をHさんにお話しし、この方法にHさんは納得されました。
大学病院で手術を行ったのは、二○○一年一○月のことでした。
これくらいの縮小手術ならば、外来局所麻酔でも十分に行えるのですが、患者さんの要望もあり、全身麻酔で行うことにしました。
まずHさんの血液を採血し、それを遠心分離して血小板を濃縮します(これを専門用語で多血小板血築くPRP)といいます。
これは後の手術のために準備しておくもので、この作業は別のスタッフが行い、その間に私と手術スタッフが手術を行います。
オトガイ部から三○×一○mほどの自家骨と骨髄を採取し、これを細かく砕いて人工骨と混ぜ合わせておきます。
次に上顎洞底部の粘膜を頬側の骨と一緒に持ち上げ(上顎洞底挙上術)、この挙上したスペースに、先ほど準備した自家骨と人工骨を混ぜ合わせたものにPRPを加えて移植しました。
そして粘膜を縫い合わせて手術は完了です。
この手術に要した時間は約二時間でした。
Hさんの希望もあり、今回は数日間ほど入院して休んでいただきました(これは実際は通院の外来手術でも十分可能です)。
その後、大学病院で定期的にCTを撮影し、骨の再生状態を観察しました。
手術後三ました。
二○○二年二月に、上顎に人工歯根を六本埋入する一次手術を行いました。
そのとき骨の一部を採取して、後に組織学的検査をしましたが、しっかりと再生された骨が確認されました。
その三か月後に、今度は下顎に人工歯根を五本埋入する手術を行いました。
二次手術は上下顎同時に二○○三年五月に行い、最終的に上下顎に固定性のインプラント義歯を装着したのが二○○三年八月です。
Hさんは、「長かったけれどその甲斐はありました。
よく噛めるし、発音もよくなって自分の昔の歯を取り戻したようです」と出来栄えに大変満足されていました。
症例によっては腸骨移植のような大きな手術をしなくても、患者さんの負担の少ない「縮小手術」が可能になったことは、私にとっても大きな収穫でした。
今後、ますます再生治療による縮小手術が行われていくことが、患者さんにとって望ましい方向性といえるでしょう。
か月で、ほぼ自分の上顎骨と同様の骨の再生が確認できました。
しかし、これは最新治療のため慎重さが要求されます。
一年間経過を追って、完全に骨の再生が安定し、人工骨が自分の骨と置換されたことを確認してから、インプラント手術に踏み切ることにし「ナビ・システム」を活用してリアルタイムのインプラント手術を行った例Iさんが私のクリニックに見えたのは二○○二年八月のことです。
八○歳の現役の内科の女医さんです。
そうしたキャリアから医学知識も豊富で、十数年前に、インプラントにいち早くチャレンジしていたのです。
下顎左側の五・六・七番が欠損したため、某開業医でそこにブレードタイプ(昔よく使われていた横に長い板状のインプラントで、現在ではほとんど使われていません)のインプラントを埋入していました。
ところが、数年前よりそれがぐらつき始め、何度か腫れを繰り返し、満足にものが噛めない状態になっていました。
来院時の訴えは「とにかくきちんと噛めるようにしたい」というものでした。
診査の結果、古いインプラントと骨との結合が失われ、インプラントが徐々に沈んでいったため、下歯槽神経との距離が近くなり、上の歯との間にも二mものすき間ができていました。
そこで、古いインプラントを完全に除去しなければならないことを伝えました。
デスクの上にインプラントだけ買えば良かった。便利で楽しいインプラントが満載です。
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インプラントの道は決して楽ではありません。インプラントのヒントをお教え致します。



